平成元年、東北地方が21世紀における日本の頭脳と産業開発の国際拠点となり、そこに未来型産業社会を形成することで、人間と自然、産業と生活・文化が調和する地域社会を目標に誕生した「東北インテリジェントコスモス構想」のこれまでの活動と、現代社会について科学と経済の両面から考えるという内容の講義でした。
前講座でも取り上げた明治維新による西洋文化の水平輸入に触れ、わが国における現在の問題点の起源は、江戸時代の長い鎖国後の急激な西洋化が日本の生き様に作り出した変容(うねり)が現代まで続いており、数々の問題の原因になっているとした上で、その解決法は①常に人間本来の目的を見つめ話し合うこと。②リファレンスなしで輸入されたために神化された人間性のない“感じない科学”を“感じる科学”にすること。この“感じる科学”とは例えば、「ウラン235の核分裂エネルギーと炭素原子の酸化エネルギーの比=2×107」を、2×107=2000万倍、1歩を1mとした時、2000万mは日本からチリまでの距離である、と実際の我々の生活と関係した数字で表すことで、感じることが出来るようになるという説明がなされ、さらに③一般社会が科学社会にそうした分かりやすい説明責任を求めることが必要であるということでした。
また、そうした科学技術とともに現代社会を先導する市場経済に関してのお話では、
イタリアの世界的ファッションデザイナー ブルネロ・クチネリ氏、オーダーメイドの手編み物を販売する㈱気仙沼ニッティング「メモリーズ」の御手洗氏、女川で技術や材料を突き詰めギターを作る(株)セッショナブルの梶屋氏を挙げ、工業化された量産型の商品ではなく、値段が高くとも欲しくなる特別な商品を作る、消費文明を考え直させるような若手実業家達を紹介されました。
最後に科学技術と市場経済が我々を取り巻いている現代社会において、何を便利にするか?便利さの対価は何か?に答えることができれば人間復興につながるとし、逆に機械文明と市場経済に疲弊しだした西洋社会の第二のルネッサンスになることを祈りたいというお言葉で締めくくられました。
令和元年度 県民講座 講座16「復興の思想」
更新日:2019.8.28
- 日時
- 8月24日(土) 14:45~15:45
- 担当講師
- 東北工業大学 名誉教授 沢田 康次 先生
- テーマ
- 「東北インテリジェントコスモス構想と東北の復興」