自身の震災への関わり方から述べられ、1983年の日本海中部地震、1995年の阪神・淡路大震災と震災後調査は行ったものの、遠隔地での出来事であったため、3年以降復興事業に直接関わることが出来なかったこと。2011年の東日本大震災に関しては被災地に近いものとして、震災復興に関連し実施してきた様々な活動を紹介され、震災に対する取り組みは被災地に近い場合と地理的に遠い場合で一研究者としての思いも著しく違うというお話をされました。被災地の復興に取り組み、見守り、社会を継続していくには、被災地とそれに関連する人たちで被災地を離れた住民の現在の居住地を知りつつ、被災地の情報を継続的に流し、被災地の将来に対して心を寄せてもらう事が重要と考えておられるようです。そこで震災前後の電話帳に基づく津波被災地世帯の居住地変化として居住地データベースの作成をされました。その結果「複数年の固定電話帳のマッチングで、世帯の居住地変化の80%程度が把握されることが明らかとなった」「詳細な分析は必要だが、津波被災地である三陸沿岸の漁村においては更に高い捕捉率が得られることが明らかになった」「大槌町、女川町で50%に近い世帯が転居を余儀なくされたことがわかった」「南三陸町の多くの世帯が隣接の登米市へ転居していることが推定された」とのことでした。
今後は最新(2019年)の電話帳データによる解析、行政区住民名簿、震災前後の住宅詳細地図などにより、住所録の作成を更に進める予定であるようです。
令和元年度 県民講座 講座25「復興の社会学」
更新日:2019.10.1
- 日時
- 9月28日(土) 16:00~17:00
- 担当講師
- 東北工業大学 名誉教授 稲村 肇 先生
- テーマ
- 「津波被災地の復興と人口移動」