活動報告 活動報告
復興人材育成教育

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復興大学現場実習③気仙沼コースを実施しました

更新日:2019.11.05

10月24日(木)、令和元年度復興大学「県民講座」の第3回目となる現場実習(気仙沼コース)を実施しました。(31名参加)

モデレーター 小祝教授

モデレーター 小祝教授

今回は、モデレーター小祝 慶紀 (東北工業大学 地域連携センター長、ライフデザイン学部 経営コミュニケーション学科 教授)の案内のもと、気仙沼市を視察しました。

バスでの移動中、災害と交通の問題について、震災によって甚大な被害を受けた気仙沼線を例に、BRT(バス高速輸送システム)の現状と課題についてお話いただき、実際の専用道路や車両も確認することができました。

また交通において「復旧:移動手段の迅速な確保・都市内移動の確保」、「復興:長期的な展望に基づく、より安全で快適な移動手段の確保・都市間移動の確保」であると語られました。

「気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館」に到着後、まず、震災時及び直後の状況を13分間の映像で確認しました。

被災者自身によって撮影された映像は生々しく、当時の緊迫感や恐怖、津波の脅威を痛感しました。視聴後、2グループに分かれ地元の語り部ガイドの方とともに、気仙沼向洋高校旧校舎内を見学しました。壊れた外壁や津波によって流され残されたままの車、地震と津波によって被害を受けた教室が当時のまま保存されており、校舎4階まで津波が到達したことを実感しました。

見学中ガイドの方からは、自身の被災体験や避難状況を詳細に説明していただき、震災当日の様子をよりリアルに知ることが出来ました。

校舎見学の後、「被災者の想い、命の大切さの映像」を視聴し、震災によって家族や友人を失った被災者の想いは心に訴えるものであり、日常の生活の尊さについて改めて考えさせられ、本施設は、将来にわたり震災の記憶と教訓を「目に見える証」として伝承していく貴重な場であると強く感じました。

南校舎1階

南校舎1階

南校舎3階 流されてきた車

南校舎3階 流されてきた車

南校舎4階

南校舎4階

南校舎屋上

南校舎屋上

壊れた壁

壊れた壁

折り重なった車

折り重なった車

昼食に立ち寄った気仙沼魚市場「海の市」には、平日にもかかわらず他地域からの団体観光客も多く見受けられ、施設内はにぎわっている様子でした。

午後は『 □ship(スクエアシップ)』のスペースをお借りして、初めに気仙沼市震災復興・企画部 小野寺 部長より、気仙沼市のまちづくり政策・人材育成についてお話を伺いました。

震災を受けた気仙沼のまちを単にリセットするだけでなく、過去から内在していた地域課題に対し震災を教訓に解決していく、未来へ向けた新たなまちづくりの事業を説明いただきました。

企業誘致や企業支援による雇用の創出、結婚・子育て支援施策、水産加工施設の集合合理化による生産性向上、移住施策、観光戦略など、人を中心としたまちづくりへの取り組みについて学びました。

特に人材育成については「経営未来塾」など産業人材・まちづくり人材の育成に力を入れており、課題を「自分ごと」として捉え、チャレンジする・チャレンジを応援する「市民が主役のまちづくり」を進める“世界とつながる豊かなローカル”気仙沼の将来像が見えました。

最後に気仙沼商工会議所 菅原 会頭より、産業の復興・振興についてお話いただきました。

産業復興に関して、グループ補助金の制度や資金の使い分け、多様な復興の主体を結集する仕組みの欠如など、復旧・復興を進める中でのご苦労について知ることができました。

美しいリアス式海岸を有する水産業と観光業のまちとして、全国初となる「気仙沼スローフード」都市宣言を行い、海・山・川・里の豊かな自然環境で育まれた食を生かした地域づくりに向け、市民と行政が一体となった活動が広がっていました。

水産業と観光業の連携・融合による新たな付加価値創造戦略の一つとして、気仙沼クルーカードの導入によるデータに基づいた戦略的マーケティングも魅力的でした。

気仙沼市震災復興計画の副題である「海と生きる」は、市民からの応募で選ばれたもので、今を生きる世代が再び海の可能性を信じ、復興を成し遂げることが犠牲者への供養となり、次世代への希望となる思いに力強さと希望を感じました。

気仙沼市 小野寺氏レクチャー

気仙沼市 小野寺氏レクチャー

商工会議所 菅原氏レクチャー

商工会議所 菅原氏レクチャー

今回の現場実習は、復興大学では初となる気仙沼市での視察となりました。

沿岸部では今なお工事が進行中であり、今後さらに町並みが生まれ変わっていくのだろうという印象を受けました。

震災遺構から見る当時の甚大な被害状況の視察、また震災を機に新たなまちづくりを進める気仙沼市の取り組みを伺い、次世代への希望を強く感じられる実習となりました。

以上で今年度3回の現場実習は全て終了となります。

甚大な被害を受けた各地区の被災地・震災遺構や現在の復興状況について、実際に足を運び、自らの目で確認出来たことは、過去を知り今後について考える貴重な機会となりました。

また、復興の道のりを通じて、地方に共通する人口減少や高齢化といった課題を、それぞれの地域特性を活かし、地方の新しい価値を創出しながら、将来持続可能なまちづくりが行われている様子を各自治体で学ぶことができました。

震災から8年半の現在の復興状況を実感するとともに、今後も行政、住民、民間事業者、学術機関、NPOなどの相互協力の重要性、そして私達も震災を語り継ぎ風化させないことが大切であることを改めて認識できた実習となりました。


見学先

気仙沼市東日本大震災遺構・伝承館
館長 佐藤 克美 様
福岡 麻子 様
語り部 近藤 様、三浦 様

気仙沼市震災復興・企画部
部長 小野寺 憲一 様

気仙沼商工会議所
会頭 菅原 昭彦 様


今回の現場実習の実施にあたりご協力いただきました皆様方へ、改めて感謝申し上げます。