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復興人材育成教育

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令和元年度 県民講座 講座26「復興の科学技術」

更新日:2019.12.05

日時
11月23日(土)13:30~14:30
担当講師
東北工業大学 建築学科 教授 堀 則男 先生
テーマ
「建築に求められる地震時の安全性と地震後の機能性」
令和元年度 県民講座 講座26「復興の科学技術」 令和元年度 県民講座 講座26「復興の科学技術」

耐震工学を専門とされる堀先生より、建築構造には地震時の安全性だけでなく、地震後の機能維持も重要であるというテーマでご講義いただきました。
これまでの歴史的大地震とそれに伴い整備されてきた建築に関わる法律を並べ、地震被害を調査し設計基準を整備することで、地震対策が進んできたことが分かりました。
1968年以降高層ビルが増加したことについて、中低層建物は揺れ幅は小さいが激しく揺れるのに対し、超高層ビルは揺れ幅が大きくゆっくり揺れ、地震の力を受け流すため安全性が高いことを説明されました。また、建物の固有周期(建物が揺れるとき1往復にかかる時間)について、振動台で3種類の長さの違う振動模型を揺らす実験の動画で確認し、建物が高いほど固有周期が長くゆっくりとした揺れになることが理解できました。

1978年の宮城県沖地震以降、建物の安全性と機能性の確保・都市全体の機能の耐震性を高めるために、特に官庁施設や避難所となる学校や公共施設は地震力を割り増して設計されるようになりました。
建物を地震に強くする考え方として、【耐震構造】たとえ共振しても壊れないような強さあるいは粘り強さを持たせる、【制振構造】建物内に揺れのエネルギーを吸収する装置を設置し、建物本体の揺れを抑える、【免震構造】固有周期を長くして共振しないようにする、の3つを挙げられました。
制振構造の例として、ダンパーなどのエネルギー吸収タイプと、建物頂部に設置した重りを揺らすことで建物本体の共振を避ける共振回避タイプを紹介し、後者のタイプについては振動台と水の入ったペットボトルを重りに見立てて模型を実際に揺らし受講生の前で検証していただきました。
また、免震構造については、建物の基礎に水平方向に柔らかく変形するアイソレータとダンパーを設置し、揺れのエネルギーを吸収することで振動を低減させる効果がある事を検証データで確認しました。

最後に、災害に備えた企業の事前の取り組みである「事業継続計画(BCP)」についてお話をいただき、被災を受けて事業が停止・縮小してしまうのではなく、被災後の事業の早期回復・継続に向けた備えを行う事を目標として、これからは建物の耐震性・安全性だけでなく、その後に備えた事前の準備をしておくことが重要であると締めくくられました。

〈参考となる図書〉
・鹿島 編「図解・超高層ビルのしくみ 建設から解体までの全技術」(講談社ブルーバックス)
・斉藤 大樹「耐震・免震・制震のはなし 第2版」(日刊工業新聞社)
・深堀 美英「免震住宅のすすめ 大地震から“家”と“家庭”を守るために」(講談社ブルーバックス)