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復興人材育成教育

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令和元年度 県民講座 講座27「復興の科学技術」

更新日:2019.12.05

日時
11月23日(土)14:45~15:45
担当講師
東北工業大学 環境エネルギー学科 準教授 佐野 哲也 先生
テーマ
「仙台湾における海岸林再生について」
令和元年度 県民講座 講座27「復興の科学技術」 令和元年度 県民講座 講座27「復興の科学技術」

森林科学を専門とされる佐野先生より、津波によって甚大な被害を受けた海岸林再生事業の現状と課題についてご講義をいただきました。
はじめに、「海岸林」について自然生態系、人口生態系、景観・風致の3つの観点からご説明いただき、海岸とマツの歴史にも触れられました。

【東北のマツ植栽の歴史を知るための3冊】
(青森・秋田)畠山 義郎「松に聞け」
(山形)須藤 儀門「砂防林物語」
(仙台)菊池 慶子「海岸林と村の暮らし」

マツについても、クロマツは耐寒性は弱いが耐塩性は強いため海岸に植栽されてきたこと、対してアカマツは耐寒性が強いため内陸まで分布していることが分かりました。

津波により海岸林のほとんどが浸水しうち750haが被害を受けた、仙台湾沿岸での海岸林再生方法について、2つの方法を挙げられました。
1つ目に盛土の導入を挙げ、理由として微高地のマツは生き残ったが、仙台湾沿岸は地下水位が高く根の張りが浅かったため、津波の威力で流されてしまったことを述べられました。
2つ目は広葉樹の導入により、マツ病害虫への対応や森林を多階層構造にすることで生物多様性の面からも森が豊かになることを挙げられました。その事例として岩沼市の「千年希望の丘」事業を紹介し、2つの技術的検証課題として、①常緑広葉樹の密植、②植栽基盤に津波堆積土砂やコンクリートガラなどの再生資材を利用するという条件での樹木の成長の様子を写真で確認し、順調に生育していることが分かりました。

最後に、津波に強い“根張り”について、盛土のかきおこしによって表面は柔らかくなり樹木の成長は改善したが、固い部分に根が突入しなければ津波に流されてしまうという今後の課題と、広葉樹の樹種選定と植栽法についてマツと常緑広葉樹単独で植栽するよりも、混ぜた方が成長が良いという検証を確認し、講義は終了しました。