あまりにも多くの犠牲者を出した東日本大震災において、どのように死の定点を考えればよいのかというお話しから始まりました。
確認できない行方不明者の死をどのように把握し受け止めるのかについて、遺族と社会との共感のずれ、そして被災地におこる幽霊現象の事例が紹介されました。
その背景とは生者でもなければ死者でもない、あいまいな喪失、「死の定点」を不明瞭にしているという事だった。しかし、死者との関りや幽霊現象については総じて死者に対する畏敬の念がこめられている。生ける死者としてあいまいなままでよい存在なのではないかとお話しされました。
また、被災地の遺族の方の見る「夢」についてのお話しでは、生きてきた証すら復興の過程でなかったことにされ、周りが復興していく中で遺族だけが取り残されていく。そんな中で遺族にとって夢の中だけは亡くなった人との未来を見ることができる。過去を今に記憶し、現在進行形に変える作用がある「あわい(此岸と彼岸の中間的な領域)」のような死者と邂逅できる世界。緩やかな死の追慕の世界があってもよいのではないかとしめくくられました。
令和2年度 県民講座 講座23「復興の社会学」
更新日:2020.10.13
- 日時
- 10月10日(土) 13:30~14:30
- 担当講師
- 関西学院大学 社会学部 金菱 清 教授
- テーマ
- 「幽霊や夢と死者への向き合い」