認知心理学をご専門とされる先生の、災害時私たち人間はどのような心理状態になるのかというテーマの講義でした。
はじめにパニック神話について触れ、“パニック”とは人々が理性を失い大混乱が生じることであるが、災害時にはむしろ避難行動において人々は助け合い、大規模なパニックが起こることはほとんどない。そのため、災害情報を発信する側は、根拠を示した避難指示を出すことが重要であると述べられました。
次に、人間がリスク情報を受け取る際に無意識にかけてしまう“認知バイアス”についての説明があり、次のような4つに分類されました。
- 「これくらいは普通の範囲だ」物事を普通の範囲で理解したがる、正常性バイアス
- 「自分だけは大丈夫」他人よりも自分は運が良いと思いこんでしまう、楽観主義バイアス
- 「~だから大丈夫」自分の気持ちに有利な情報だけを集める、確証バイアス
- 「みんなと一緒なら」他人に同調していれば安心という、集団同調性バイアス
これらの認知バイアスは普段生活する上では、心理的安定に寄与してくれるものであるが、災害時には逆効果を生んでしまう。いざという時にはこれらのバイアスを理解し、振り払う心構えが必要であると解説されました。
さらに、緊急時の心理と行動として4つの認知特性もあげられました。
「情報処理範囲が狭くなる」、「注意集中による見落としや勘違いが起こる」、「熟慮的思考が困難になる」。これらの3つについては、実験的な動画を視聴し実際に私たちにもこれらの認知特性が簡単に起こることを体験しました。4つ目の「災害時家族のことが気になる」については、災害時すぐに避難しなかった理由のアンケート結果を示され、1位~3位が家族に関する事であったことから「津波てんでんこ」を紹介し、家族間の事前の話し合いの必要性に言及されました。
最後に、被災後の心理的後遺症として、急性ストレス障害(ASD)心的外傷後ストレス障害(PTSD)について触れられ、被災者とのコミュニケーション時は受け手のことを第一に考えること、被災者の心・気持ちに寄り添うためには被災者や被災地のことを知る必要があると述べられ、1講座目は終了いたしました。